✨ 鍵配送問題:具体的にどんな苦労があったのか
外交暗号書(コードブック)の運搬
第一次・第二次世界大戦時代まで、各国の外交官や軍は「コードブック」と呼ばれる暗号化記号集を使っていました。これを安全に配布するための苦労は壮大でした:
- 外交ポーチ:外交官特権により荷物検査が禁止された外交用かばん(鎖で手首につながれる)でコードブックを運搬
- 重りと沈没:船でのコードブック運搬時に「船が攻撃されたら必ず海に沈める」義務。英国海軍は1914年に機雷で傷ついたドイツ艦のコードブックを海底から回収(スクバダイバー前の時代に!)
- コードブックの寿命:本が奪われると全ての暗号が解読されるため、数ヶ月ごとに全世界の拠点に新しいコードブックを配布——膨大なコストと危険が伴った
OTP(ワンタイムパッド):完全な秘匿性だが最悪の鍵配送問題
ワンタイムパッドは理論的に解読不可能です(1949年シャノンが証明)。ただし等量の乱数鍵を事前に安全に渡す必要があります——「送信するデータと同じ量の鍵を事前に物理的に配達する」という本末転倒な問題が生じます。
😱 OTPの鍵配送問題
100GBのメッセージを送りたい→100GBの乱数鍵が必要→その100GBを安全に相手に届ける必要がある→なぜ最初から100GBのデータを安全に送らなかったのか?
冷戦時代、米ソの首脳間のホットライン(1963年設置)にはOTPが使われていました。外交官が物理的にパッドを手渡し、使ったページは焼却処分するという手続きが必要でした。
n人通信での鍵の爆発的増加
共通鍵暗号でn人が全員ペアで通信するには n(n-1)/2 個の鍵が必要です:
- 2人:1つの鍵
- 10人:45つの鍵
- 100人:4,950つの鍵
- 1億人(インターネット):約5×10¹⁵個の鍵——管理不可能
鍵配布センター(KDC)アプローチの限界
信頼できる第三者が全員の鍵を管理する「鍵配布センター」方式は軍・政府組織で試みられましたが:
- KDCが全ての通信を復号できる→プライバシーなし
- KDCが攻撃されると全ての通信が危険に——単一障害点
- KDCを誰が管理するのか?その信任問題
📌 まとめ:これらの問題をDH法がどう解決したか
DH鍵交換(1976年)は以上の問題を一気に解決しました:
- ✅ 事前の鍵共有が不要——初対面でも安全に鍵交換できる
- ✅ n人の接続に n-1個の交換で済む——スケールに対応
- ✅ 第三者の介在が不要——分散型で機能する
- ✅ 公開情報だけで共有秘密を生成できる——盗聴者が全通信を傍受しても無効
